トリマーの老後資金|NISA・iDeCoの違いとサロン経営者の実例

トリマー向け老後資金のためのNISAとiDeCoの解説イメージ.

トリマーは老後資金をどう備える?独立2年目から投資を続けたサロン経営者の実体験

トリミングサロンがある程度軌道に乗ったあと、売上をさらに伸ばすことと同じくらい考えてほしいのが、「自分が現場に立てなくなったあとのお金」です。

トリマーは体力勝負の仕事です。今は1日3頭、4頭と施術できていても、60歳や65歳まで同じ頭数を続けられるとは限りません。腰・肩・手首を痛めたり、病気やけがによって、予定より早く現場の仕事を減らす可能性もあります。

特に個人事業主のトリマーは、会社員のような厚生年金や会社からの退職金が基本的にありません。私は、公的年金以外の老後資金づくりも必須に近いと考えています。

ただし、この記事は「今すぐ投資を始めるべき」「この商品を買えば増える」とすすめるものではありません。私自身が開業2年目から約10年間投資を続けてきた経験をもとに、トリマーが老後資金とどう向き合えばよいかをお伝えします。

先に結論をまとめると、大切なのは次の5点です。

  • 税金・生活費・サロンの運転資金を先に残す
  • 月1万円でも、無理なく続けられる金額から始める
  • NISAとiDeCoは、税制だけでなく引き出せる時期の違いも理解する
  • 老後資金の中心は、低コストで広く分散された商品を検討する
  • 投資のために、旅行や遊びまで諦めない
目次

トリマーが早めに老後資金を考えたい理由

「定年がない」と「いつまでも働ける」は違う

個人事業主には、会社員のような定年がありません。自分が望めば何歳まででも働けることは、独立する魅力の一つです。

しかし、「定年がないこと」と「今と同じ働き方をいつまでも続けられること」は別です。

トリミングは、長時間立ったまま犬を支え、ハサミやバリカンを使い続ける仕事です。年齢とともに1日に施術できる頭数が減れば、そのまま売上にも影響します。

1人サロンの頭数・単価・売上の関係は、トリマー1人で月商120万円を達成した実例でも詳しく紹介しています。

スタッフを育てる、経営に回る、物販や教室など現場以外の収入を作るといった選択肢もあります。それと同時に、若いうちから少しずつ資産を作っておけば、「生活のために無理をして切り続ける」以外の道も選びやすくなります。

個人事業主の国民年金だけで生活できるのか

2026年度の国民年金保険料は月17,920円です。40年間すべて納付した場合の老齢基礎年金は、2026年度の満額で月70,608円。老齢基礎年金受給権者の平均年金月額は、直近公表値で約5.9万円です。

もちろん、国民年金は老後資金だけの制度ではなく、障害年金や遺族年金の役割もあります。そのため「払っても意味がない」という話ではありません。

ただ、老後の家賃・食費・光熱費・医療費などを考えると、国民年金だけで生活するのは難しい人が多いと思います。

なお、個人事業主と小規模法人は年金の扱いが同じではありません。個人事業主は原則として国民年金ですが、株式会社などの法人事業所は、事業主1人の場合を含めて原則として厚生年金の適用対象です。

私自身も個人事業の時期を経て法人化し、現在は厚生年金と企業型確定拠出年金を利用しています。

雇われ・独立それぞれの収入や、税金・社会保険を差し引いた後の金額については、トリマーの年収と独立後の手取りで詳しく解説しています。

私が投資を始めたのは、開業2年目の2016年

私が老後に向けた資産形成を始めたのは、トリミングサロンを開業して2年目の2016年です。

当時は予約が約1か月待ちになり、利益もしっかり残るようになっていました。開業直後から焦って始めたのではなく、事業が軌道に乗り、手元にお金を残せるようになった段階で始めています。

サロン経営では、売上の大きさだけでなく、経費を差し引いていくら残るかが重要です。トリミングサロンの利益率と原価率では、地方と都心の実例を比較しています。

直接のきっかけは、老後への不安でした。個人事業主として働き続けるなかで、国民年金だけに頼ることへの不安がありました。一方で利益が出るようになり、税金について考え始めた時期でもあったため、所得控除を受けながら老後資金を作れるiDeCoが合っていると考えました。

夫婦で加入し、それぞれ当時の上限だった月6万8,000円、合計月13万6,000円から始めました。

ただし、最初から満額にすることを全員にすすめるわけではありません。当時の私たちは予約と利益が安定し、満額を無理なく続けられる状況だったから選べた金額です。

軌道に乗る前であっても、生活と経営を圧迫しないのであれば、月1万円から始めても問題ありません。金額の大きさより、下落したときにも慌てず続けられることの方が大切です。

投資を始めてから現在まで

時期取り組んだこと
2016年・開業2年目夫婦でiDeCoを開始。それぞれ月6万8,000円を積み立て
投資開始当初日経平均と全世界株式型のインデックスファンドを50%ずつ保有
その後米国株を中心とした投資へ移行
法人化後企業型確定拠出年金を導入し、夫婦それぞれ月5万5,000円を積み立て
現在NISA・企業型DC・法人口座を利用。最近の新規積立はTOPIXが中心

NISA・iDeCo・企業型DCの違い

NISAとiDeCoは、どちらも資産形成に使える制度ですが、同じものではありません。

最も大きな違いは、NISAは必要なときに売却して使える一方、iDeCoは老後資金を目的とした制度なので原則60歳まで引き出せないことです。

比較項目NISAiDeCo企業型DC
主な目的幅広い資産形成個人で作る老後資金会社を通じて作る老後資金
掛金の所得控除なし全額が所得控除拠出方法により異なる
運用益非課税非課税非課税
引き出し売却して引き出せる原則60歳まで不可原則60歳まで不可
向いている人換金しやすさも重視したい人所得控除を受けながら老後資金を作りたい人勤務先や自社で制度を利用できる人

NISAは、使いやすさが大きなメリット

通常、投資によって得た売却益や配当・分配金には税金がかかりますが、NISA口座内の利益は非課税です。

2026年7月時点のNISAには、年間120万円の「つみたて投資枠」と年間240万円の「成長投資枠」があり、合計で年間360万円まで投資できます。生涯の非課税保有限度額は合計1,800万円で、そのうち成長投資枠は1,200万円までです。

また、必要になれば途中で売却できます。売却した商品の取得金額分は、翌年以降に非課税枠を再利用できます。

サロン経営では、設備の故障、移転、スタッフ採用などで急にまとまったお金が必要になることがあります。その可能性が高い時期は、原則60歳まで引き出せないiDeCoより、換金しやすいNISAの方が使いやすい場合があります。

一方、NISAへの投資額は所得控除になりません。「NISAで利益にかかる税金を非課税にすること」と、「iDeCoで現在の課税所得を減らすこと」は別の仕組みです。

iDeCoには3段階の税制優遇がある

iDeCoには、主に次の3つの税制上のメリットがあります。

  1. 支払った掛金の全額が所得控除になる
  2. 運用中の利益が非課税で再投資される
  3. 受取時に、年金なら公的年金等控除、一時金なら退職所得控除の対象になる

特に個人事業主にとって大きいのが、掛金の全額を所得から差し引けることです。

ただし、掛金と同じ金額の税金が戻るわけではありません。iDeCoは、掛金をその年の所得から差し引き、その結果として所得税と住民税の負担を軽くする制度です。

例えば毎月3万円、年間36万円を積み立て、所得税と住民税を合わせた税率が20%の人なら、年間の税負担は概算で約7万2,000円軽くなります。

毎月の掛金年間の所得控除額税率15%の場合税率20%の場合税率30%の場合
1万円12万円約1万8,000円約2万4,000円約3万6,000円
3万円36万円約5万4,000円約7万2,000円約10万8,000円
6万8,000円81万6,000円約12万2,400円約16万3,200円約24万4,800円

※所得税と住民税を合計した税率で計算した概算です。復興特別所得税、ほかの所得控除、自治体による違いなどは反映していません。実際の軽減額は課税所得によって変わります。

夫婦で加入した場合も、それぞれの掛金はそれぞれ本人の所得から控除します。妻のiDeCo掛金を夫の所得から控除するといった使い方はできません。

また、課税される所得がほとんどなければ、拠出時の所得控除による節税効果も小さくなります。利益が安定していない時期に、節税だけを理由に無理な金額を積み立てる必要はありません。

iDeCoは「完全非課税」ではない

iDeCoは受け取るときにも控除を利用できますが、必ず全額非課税になるわけではありません。

一時金で受け取る場合は退職所得控除、年金で受け取る場合は公的年金等控除の対象です。しかし、ほかの退職金や年金との受取時期、金額によっては税金がかかります。

さらに、原則60歳まで引き出せず、加入時や運用中には手数料もかかります。投資信託を選べば元本割れの可能性もあります。

「掛金が所得控除になるから得」と一面だけを見るのではなく、使える時期・手数料・受取時の税金まで理解したうえで選ぶことが大切です。

2026年7月時点で、自営業者など国民年金第1号被保険者のiDeCo掛金上限は、国民年金基金などとの合算で月6万8,000円です。2026年12月1日からは、この合算上限が月7万5,000円に引き上げられます。

法人化後は企業型DCを導入

私たちは法人化後に企業型確定拠出年金を導入し、現在は夫婦それぞれ月5万5,000円を積み立てています。

法人化前と法人化後では、社会保険や利用できる制度が変わります。iDeCoの資産を別の確定拠出年金制度へ移す場合にも手続きが必要になるため、法人化する際は運営管理機関や専門家に確認した方が安全です。

なお、法人口座でもTOPIXを中心に運用していますが、法人名義の金融資産はあくまで法人の所有物です。個人のNISAや年金資産と同じように、自由に個人が使えるお金ではありません。

法人で投資をする場合の税金や経理処理は、個人のNISAとは大きく異なるため、別の記事で詳しく解説します。

NISAとiDeCoはどちらを優先するべきか

全員に共通する正解はありませんが、トリミングサロン経営者であれば、私は次の順番で考えるのが現実的だと思います。

1.税金・生活費・サロンの運転資金を確保する

投資より先に、近いうちに支払う税金、当面の生活費、サロンの運転資金を現金で残します。

投資信託は、必要なときに値下がりしている可能性があります。数か月後に使う予定のお金まで投資してしまうと、下落時に売却せざるを得なくなります。

開業費とは別に残しておく運転資金の考え方は、トリミングサロンの開業資金と運転資金でも詳しく解説しています。

2.引き出せる余地を残したいならNISAから考える

利益がまだ安定していない、設備投資や移転の可能性がある、子どもの教育費など大きな支出を控えている場合は、途中で売却できるNISAの方が柔軟です。

ただし、NISAも預金ではありません。売りたい時点で元本割れしている可能性があります。

3.利益が安定し、老後まで使わないお金ならiDeCoを検討する

利益が安定して税負担も増えてきたら、iDeCoの所得控除が生きてきます。

私がiDeCoを始めたのも、開業2年目で予約が約1か月待ちになり、利益が残るようになったタイミングでした。

一方で、60歳まで引き出せないため、満額から始める必要はありません。月1万円から始め、利益や手元資金に合わせて考える方法でも十分です。

投資本を20冊以上読んで、インデックス投資に落ち着いた

投資を始める前後に、投資や資産形成の本を20冊以上読みました。

特に影響を受けたのが、山崎元さん・大橋弘祐さんの『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』です。

いろいろな方法を学びましたが、最終的に感じたのは、私を含めて相場を毎日分析する専門家ではない人には、低コストのインデックス型投資信託が無難だということです。

インデックスファンドは、特定の株価指数への連動を目指す商品です。1社の個別株に集中するより、複数の企業へ分散しやすく、低コストの商品も多くあります。

ただし、「投資信託なら何でもよい」わけではありません。投資信託の中にも手数料が高いもの、仕組みが複雑なもの、特定の業種に偏ったものがあります。

購入時手数料、保有中にかかる信託報酬、何に投資している商品なのかは、最低限確認した方がよいです。長期投資では、毎年の小さな手数料の差も積み重なります。

S&P500とオール・カントリーは「人気だから安心」ではない

初めて投資をする人が候補として考えやすいのは、低コストのS&P500連動型や全世界株式(オール・カントリー)連動型のインデックスファンドです。

  • S&P500: 米国の代表的な大型企業約500社へ分散する
  • オール・カントリー: 日本・米国・欧州・新興国など世界の株式へ広く分散する

どちらも、多くの企業に分散しやすく、低コストの商品を選びやすい点が魅力です。

ただし、S&P500は米国に集中します。オール・カントリーにも米国株が多く含まれるため、両方を持つと米国株の重複が増えます。そして、どちらも株式なので大きく値下がりすることがあり、元本保証ではありません。

私はこれらを代表的な候補として考えていますが、将来の利益を保証するものではありません。自分がどの地域に、どれだけ投資しているかを理解したうえで選ぶ必要があります。

現在の資産配分

私が最初に投資したのは、日経平均と全世界株式型のインデックスファンドの50%ずつでした。

その後は米国株中心へ移行し、最近はTOPIXを中心に新規の積み立てを行っています。

現在、NISA・企業型DC・法人口座を通じた運用全体の大まかな構成は、次のとおりです。

投資先割合
TOPIX35%
オール・カントリーとS&P500の合計65%

これは私が投資を続ける中で変化してきた結果であり、そのまま真似してほしい見本ではありません。オール・カントリーとS&P500には重複もあるため、「この比率が最適」という意味でもありません。

証券会社はSBI証券と楽天証券

私はSBI証券、妻は楽天証券を利用しています。

分けている理由は、取り扱っている商品やサービスに細かな違いがあり、夫婦で比較しながら、より合う商品を選べるようにするためです。

とはいえ、初心者が長期の積立投資を始めるうえで、SBI証券と楽天証券のどちらか一方が圧倒的に正解というほどの差ではないと感じています。

普段から楽天のサービスをよく使っている人なら、楽天証券も十分候補になります。細かな機能を比較し続けて始められないより、手数料が低く、分散された商品を無理のない金額で続ける方が大切です。

個別株は老後資金の中心にしない

個別株は、投資した会社や業界を調べるきっかけになります。日本だけでなく世界の企業や経済がどれほどつながっているかを実感できるので、投資自体が好きな人にとっては面白いものです。

私も、余裕資金の中で趣味として楽しむことまで否定するつもりはありません。

ただし、1社や数社に資産の大半を集中させると、その会社の不祥事、業績悪化、倒産などの影響を大きく受けます。老後資金の中心として資産の大半を個別株へ入れるのは、本当にリスクが高いと考えています。

個別株をするのであれば、生活費や老後資金とは分けて、なくなっても生活に影響しない範囲に抑える方がよいと思います。

2016年からの運用リターンを公開

私が投資を始めた2016年からの運用結果も公開します。

以下は、私が利用しているSBI証券の「トータルリターン」画面に表示された、投資信託の年別リターンです。

トータルリターン率
2016年+15.36%
2017年+13.09%
2018年−6.94%
2019年+27.77%
2020年+12.36%
2021年+35.52%
2022年−5.98%
2023年+34.37%
2024年+33.41%
2025年+15.16%
2026年+11.78%
全期間+143.33%

※2026年7月30日時点の実績です。2016年は投資開始後から、2026年は年初から7月30日までの数字です。

※SBI証券で保有している投資信託のみの結果です。妻の楽天証券、企業型DC、法人口座などの運用結果は含まれていません。

※SBI証券の年別トータルリターン率は、その年の損益を「その年の買付金額と前年末の評価金額」で割って計算したものです。各年の数字を単純に足したり掛け合わせたりして算出する年平均利回りとは異なります。計算方法はSBI証券の公式案内で確認できます。

毎年プラスだったわけではない

全期間では+143.33%になっていますが、毎年順調に増え続けたわけではありません。

2018年は−6.94%、2022年は−5.98%と、年間のトータルリターンがマイナスになりました。

2020年も最終的には+12.36%でしたが、コロナ禍の途中には株価が大きく下落し、保有資産も短期間で減少しました。

それでも私は、売却せずに積立と保有を続けました。

「世界の企業や経済が長期的に成長していくのであれば、株価もいずれ回復に向かうだろう」と考えていたからです。

もちろん、将来の値動きを予測できていたわけではありません。コロナ禍から必ず短期間で回復するという保証もありませんでした。

それでも、1社の個別株ではなく、複数の国や企業へ分散されたインデックスファンドを中心に保有していたため、短期的な値下がりだけを理由に売る必要はないと判断しました。

結果として、その後は株価が回復し、投資開始からの全期間ではプラスになっています。

ただし、今回の結果は、私が投資を始めた時期やその後の市場環境にも恵まれた結果です。同じ商品を買えば、誰でも同じリターンを得られるという意味ではありません。

日経平均株価が過去の高値を更新するまで約34年かかったように、買った時期によっては10年、20年と停滞する可能性もあります。今後も同じようなペースで株価が上がり続ける保証はありません。

だからこそ、数年以内に使う予定のお金や、サロンの運転資金まで投資に回さないことが重要です。

一時的にマイナスになっても慌てて売らずに済む余裕資金で行うからこそ、長期的に保有し続けられるのだと思います。

私が投資について最も後悔しているのは、損をしたことではなく、もっと早く始めなかったことです。

長く続けるほど複利の効果を得やすくなります。ただし、焦って大きな金額から始める必要はありません。生活やサロン経営に影響しない範囲で、月1万円など無理なく継続できる金額から始めることが大切だと考えています。

投資をしないことにもリスクはある

投資には元本割れのリスクがあります。一方で、預金だけに偏ることにも、インフレによってお金の実質的な価値が下がるリスクがあります。

例えば、今1万円で買えるものが将来1万3,000円になれば、預金通帳の1万円という数字は減っていなくても、そのお金だけでは同じものを買えません。

つまり、「投資をすることだけがリスクで、預金なら完全に安全」とは言い切れません。預金には元本が大きく変動しにくく、いつでも使いやすいという重要な役割がありますが、物価上昇に対する購買力の低下は考える必要があります。

大切なのは、預金か投資かの二者択一ではありません。

  • 近いうちに使う生活費
  • 税金の支払い
  • サロンの運転資金
  • 故障や病気に備えるお金

こうしたお金は現金で持ち、それ以外の長期間使わないお金の一部を投資に回す。私は、この分け方が現実的だと思います。

低金利の借入は、繰上げ返済より投資を優先

私自身にも借入はありますが、余剰資金ができるたびに繰上げ返済をしているわけではありません。

私が利用している借入は比較的金利が低く、毎月の返済にも無理がないため、急いで返すよりも、予定どおり返済を続けながら余剰資金を長期投資へ回す方が、結果として資産を増やしやすいと考えているからです。

繰上げ返済をすれば、将来支払う利息を確実に減らせます。ただし、借入金利が低ければ、減らせる利息も比較的小さくなります。

一方、その資金をNISAなどで10年、20年と運用し、借入金利を上回るリターンを得られれば、その差が資産の増加につながります。早く投資に回すほど、複利が働く期間を長く取れることも理由の一つです。

そのため私は、税金・生活費・サロンの運転資金・急な出費に備える現金を確保したうえで、低金利の借入は予定どおり返済し、残った余剰資金は繰上げ返済より投資に回すことを優先しています。

ただし、借りたお金そのものを投資しているわけではありません。また、投資のリターンは保証されておらず、元本割れしたり、借入金利を下回ったりする可能性もあります。

借入金利が高い場合や毎月の返済負担が大きい場合、変動金利などで今後の金利上昇の影響を受ける場合は、繰上げ返済を優先した方がよいこともあります。

「低金利なら必ず投資が正解」という意味ではありません。返済を続けても経営と生活に余裕があり、相場が下落しても長期保有できる余剰資金であることが前提です。

もっと早く始めればよかったと思う理由

投資について一番後悔していることは、もっと早く始めておけばよかったということです。複利の効果はとても大きく、同じ毎月の積立額でも、続ける期間によって結果は変わります。

仮に毎月1万円または3万円を、年3%で積み立てられた場合の単純な試算は次のとおりです。

毎月の積立額20年後30年後
1万円約328万円(元本240万円)約583万円(元本360万円)
3万円約985万円(元本720万円)約1,748万円(元本1,080万円)

※毎月末に積み立て、年3%で複利運用できたと仮定した概算です。手数料・税金は考慮しておらず、将来の運用成果を保証するものではありません。実際には元本割れする時期もあります。

早く始めることは有利になりやすい一方で、焦って手元のお金をすべて投資する必要はありません。サロンが軌道に乗り、キャッシュを残したうえで始めるのが基本です。

まだ利益が大きくない場合でも、無理がなければ月1万円から始められます。「満額にできるまで何もしない」より、少額で値動きに慣れ、自分がどれくらいの下落に耐えられるかを知ることにも意味があります。

投資のために、今の人生を犠牲にしない

私は、生活に必要なお金と毎月投資する金額を先に考え、残った範囲で旅行に行ったり、遊んだりするようにしています。

使える金額が決まっていれば、その範囲で工夫して楽しめます。

一方で、投資額を増やすために旅行も外食も趣味もすべて諦めてしまうと、生活自体が無味無臭になってしまいます。将来のための資産形成は大切ですが、今の時間も戻ってきません。

投資を理由に人生を楽しむことまで諦めるのは、個人的には避けた方がよいと思っています。

無理せず継続できる範囲で積み立てながら、今の人生も楽しむ。このバランスが、結果として投資を長く続けることにもつながります。

資産形成で増えるのは、お金だけではなく選択肢

この記事で私自身の資産額を公開するつもりはありません。

ただ、資産形成を続けてきたことで、都内でなければ家を買ってリタイアすることも選択肢に入るくらいにはなりました。

子どももいるため、今すぐ仕事を辞めるつもりはありません。トリミングサロンや現在の事業も、まだしばらく続けるつもりです。

それでも、「働かなければ生活できない」のと、「働きたいから続ける」のでは意味が大きく違います。

住む場所、働く時間、現場で担当する頭数、何歳まで仕事を続けるか。資産形成をすることで、将来これらを自分で選べる余地が増えます。これも、投資を続ける大きな魅力だと感じています。

まとめ|無理なく続けられる金額から始める

トリマーは体力勝負の仕事です。60歳や65歳まで今と同じ頭数を施術できるとは限らないため、公的年金だけでなく、その先の生活についても早めに考える必要があります。

私自身は、開業2年目で予約が約1か月待ちとなり、利益がしっかり残るようになった2016年に、夫婦でiDeCoを始めました。その後、法人化して企業型DCを導入し、現在はNISA・企業型DC・法人口座を使い分けています。

投資本を20冊以上読んできましたが、私を含む多くの人にとって、老後資金の中心は低コストで広く分散されたインデックス型投資信託が比較的続けやすいと考えています。

ただし、長期投資でも利益が保証されるわけではありません。10年、20年と停滞する可能性も、元本割れする可能性もあります。

これから考える方は、次の順番で進めてみてください。

  1. ねんきんネットで、自分の将来の年金見込額を確認する
  2. 税金・生活費・サロンの運転資金を確保する
  3. NISAとiDeCoの違いを理解する
  4. 手数料と投資先を確認する
  5. 下落しても続けられる金額から積み立てる

投資をするかどうか、何にいくら投資するかは自己責任です。だからこそ、分からないまま大きな金額を入れず、まずは制度とリスクを学ぶことが大切です。

そして、将来のために今の人生を犠牲にしすぎないことも忘れないでください。

無理せず継続できる範囲で資産を作りながら、今の生活も楽しむ。その積み重ねが、トリマーとしての将来の選択肢を増やしてくれると思います。


よくある質問

個人事業主のトリマーは、NISAとiDeCoのどちらから始めるべきですか?

利益や手元資金がまだ安定しておらず、途中でお金が必要になる可能性がある場合は、必要なときに売却できるNISAの方が使いやすいでしょう。一方、利益が安定していて、60歳まで使わない老後資金を準備したい場合は、掛金が所得控除になるiDeCoも候補になります。両方を併用することもできますが、税金・生活費・サロンの運転資金を先に確保することが大切です。

自営業者はiDeCoに毎月いくらまで積み立てられますか?

2026年7月時点では、国民年金第1号被保険者の掛金上限は、国民年金基金などとの合算で月6万8,000円です。2026年12月1日からは、この合算上限が月7万5,000円へ引き上げられます。加入区分やほかの制度の利用状況によって上限が異なるため、申し込む前にiDeCo公式サイトなどで確認してください。

iDeCoでは、実際にどれくらい節税できますか?

節税額は、年間の掛金とその人の課税所得によって変わります。例えば、毎月3万円、年間36万円を積み立て、所得税と住民税を合わせた税率を20%と仮定すると、年間の税負担は概算で約7万2,000円軽くなります。ただし、掛金と同じ金額が戻る制度ではなく、課税所得が少ない場合は節税効果も小さくなります。

S&P500やオール・カントリーなら損をしませんか?

どちらも元本保証ではありません。S&P500は米国株、オール・カントリーは世界の株式へ分散しやすい代表的な指数ですが、株式市場全体が下がれば大きく値下がりすることもあります。長期保有しても利益が保証されるわけではないため、下落しても生活やサロン経営に影響しない金額で行うことが大切です。

投資を始める前に、いくら預金を残せばよいですか?

全員に共通する金額はありません。近いうちに支払う税金、当面の生活費、サロンの運転資金、設備の故障や病気に備えるお金を合計し、まずはその金額を現金で確保しておきましょう。数年以内に使う予定のお金まで、値動きのある株式や投資信託へ回すのは避けた方が安全です。


記事内の注意書き

この記事は、筆者個人の経験と考えを紹介するものであり、特定の金融商品・証券会社の購入や契約を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。制度・税制・上限額は2026年7月時点の情報であり、加入資格や税額は個人の状況によって異なります。実際の判断は、金融機関、税理士、社会保険労務士などの専門家にもご確認ください。

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