トリミングサロンとペットホテルは、とても相性のいい組み合わせです。
トリミングのお客様はそのまま宿泊の見込み客になりますし、ホテルで預かったついでにトリミングを受注できることも少なくありません。
ただし、相性がいいからといって、何も考えずに導入するのはおすすめできません。
ペットホテルには「休みがなくなる」「近隣クレームにつながる」「命を預かるリスクがある」といった、売上以上に重いデメリットもあるからです。
この記事では、トリミングサロンがペットホテルを兼業する場合の収益の現実、年収の考え方、メリット・デメリット、始める前に確認すべき登録について解説します。
当店ではペットホテルを行っていませんが、これまでホームページ制作や開業相談を通じて、ペットホテルを併設しているサロンも数多く見てきました。
その実例も踏まえながら、トリミングサロンにペットホテルを導入すべきかどうかを整理していきます。
ペットホテル経営は儲かる?収益の現実
まず多くの方が気になる「ペットホテルは儲かるのか」という点から見ていきます。
結論から言うと、ペットホテルは設計次第で十分に収益源になります。
特に、すでにトリミングサロンを運営している場合は、既存のお客様、店舗、設備、ホームページを活用できるため、ペットホテル単体で新規開業するよりも始めやすい面があります。
一方で、売上だけを見て判断すると失敗しやすい事業でもあります。
なぜなら、ペットホテルはトリミング以上に「時間」「休み」「事故リスク」「近隣環境」の影響を受けるからです。
ホテルだけで月商80万円のサロンもある
ひと昔前は、ペットホテルで月10万円〜20万円の利益が出れば十分という感覚もありました。
しかし最近は、ペットホテルの単価そのものが上がってきており、収益の作り方も変わってきています。
実際、都内にはトリミングとは別に、ペットホテルだけで月商80万円ほどを作っているサロンもあります。
これはトリミングの売上を含まない、宿泊単体の数字です。
トリミングは1頭ごとにトリマーの時間を使い切りますが、ペットホテルは一度預かれば複数頭を並行して見られるため、人件費に対する売上効率が高くなりやすい特徴があります。
もちろん、預かり頭数を増やせばいいという単純な話ではありません。
頭数が増えれば、その分だけ管理の負担も増えます。夜鳴き、体調不良、ケンカ、脱走、近隣への音の問題など、リスクも同時に大きくなります。
そのため、ペットホテルで利益を出すには、ただ頭数を増やすのではなく、どのような預かり方をするのかを先に決めることが大切です。
ペットホテル経営の年収はどれくらい狙えるのか
ペットホテル経営の年収は、店舗の規模、営業日数、預かり頭数、宿泊単価、人件費、家賃によって大きく変わります。
たとえば、ホテルだけで月商80万円を作れているサロンの場合、年間売上にすると960万円です。
ただし、月商80万円がそのまま年収になるわけではありません。
ここから人件費、家賃、光熱費、清掃費、消耗品費、設備費、広告費、保険料などが差し引かれます。
特にペットホテル単体で物件を借りて、人を雇って、多頭数を預かる形にすると、売上は大きく見えても固定費が重くなります。
一方で、すでにトリミングサロンを運営していて、家賃や設備の一部を共用できる場合は、ペットホテル単体で新しく店舗を作るより利益を残しやすくなります。
つまり、個人サロンが考えるべきなのは「ペットホテルで年収いくらを狙えるか」よりも、「今ある店舗・人員・営業時間の中で、無理なくどれだけ利益を上乗せできるか」です。
年収を大きく見せることよりも、既存サロンの利益を安定して増やせるかどうか。
ここを基準に考える方が、現実的な経営判断になります。
個人サロンは「多頭数」より「少数プレミアム化」が向いている
個人サロンの場合、ケージをたくさん並べて頭数で売上を稼ぐスタイルは、あまり現実的ではありません。
スペースにも限界がありますし、頭数が増えるほど目が届きにくくなります。
また、頭数が増えるほど夜鳴きや事故のリスクも上がります。
個人規模でペットホテルを成立させるなら、少数の頭数を丁寧に預かるプレミアム型のほうが向いています。
たとえば、次のような形です。
- 1日数頭限定
- 完全個室
- ケージフリーの時間を設ける
- カメラで様子を共有する
- トリミング利用者限定にする
- シニア犬や持病のある子は慎重に判断する
- 既存のお客様を優先して預かる
安く・たくさん預かるのではなく、高く・少なく・安全に預かる。
これが、個人サロンがペットホテルで利益を残すための基本設計だと思います。
どんな飼い主さんに、どんな価値を届けて、いくらで預かるのか。
この収益設計を先に固めることが、ホテル兼業で失敗しないための第一歩です。
トリミングサロンがペットホテルをやるメリット
トリミングサロンがペットホテルを併設するメリットは大きいです。
特に、すでにお客様との信頼関係があるサロンにとっては、ペットホテルは自然に売上を増やしやすいサービスです。
トリミング以外に売上の柱ができる
最大のメリットは、トリミングとは別の売上源を持てることです。
トリミングは1頭ごとに施術時間が必要です。
1人サロンであれば、1日にできる頭数には限界があります。
一方、ペットホテルは預かっている時間すべてに対して、トリマーがつきっきりで作業をするわけではありません。
もちろん見守りやお世話は必要ですが、トリミングと比べると、同じ時間の中で売上を上乗せしやすいサービスです。
トリミングの予約が埋まりにくい時期でも、ペットホテルの利用があれば売上を下支えしてくれます。
預かったついでにトリミングの注文が入る
ペットホテルに預けるついでに、「せっかくだからカットもお願いします」というお客様は少なくありません。
宿泊とトリミングをセットで受注できれば、客単価そのものが上がります。
たとえば、ホテル代に加えてシャンプーやカットが入れば、1回の来店で得られる売上は大きくなります。
飼い主さんにとっても、旅行中に預けて、帰ってきたらきれいになっているというのは大きなメリットです。
ペットホテルは宿泊単体の売上だけでなく、トリミング受注のきっかけにもなります。
「ペットホテル」検索から新規顧客を獲得しやすい
ペットホテルをやっていないトリミングサロンは少なくありません。
そのため、「地域名+ペットホテル」で探している飼い主さんに対して、お店を知ってもらうきっかけを作れます。
ホテルで初めて来店したお客様が、その後トリミングのリピーターになることもあります。
特に、旅行や帰省のタイミングでペットホテルを探している飼い主さんは、すぐに預け先を決めたい状態です。
ホームページに料金、預かり条件、店内環境、安全管理、予約方法がきちんと書かれていれば、問い合わせにつながりやすくなります。
ペットホテルは、宿泊サービスであると同時に、新規顧客の入り口にもなるサービスです。
既存のお客様に案内しやすい
ペットホテルは、既存のお客様に案内しやすいサービスです。
トリミングで通っているサロンであれば、飼い主さんも犬もすでに場所に慣れています。
初めて行く施設に預けるよりも、いつものサロンに預けられる方が安心できる飼い主さんは多いです。
特に、犬の性格や体調を理解しているサロンであれば、飼い主さん側の不安も減ります。
この「すでに信頼関係がある」という点は、トリミングサロンがペットホテルを始める大きな強みです。
トリミングサロンがペットホテルをやるデメリット
ペットホテルには大きなメリットがあります。
しかし、デメリットもかなり大きいです。
当店がペットホテルをやっていないのも、このデメリットを重く見ているからです。
休みがなくなる・繁忙期ほど休めない
ペットホテル最大のデメリットは、休みのコントロールが難しくなることです。
トリミングだけなら、年末年始やお盆を休みにすることができます。
しかし、ペットホテルの利用が増えるのは、まさに世の中が連休に入るタイミングです。
年末年始、ゴールデンウィーク、お盆、三連休など、多くの人が旅行や帰省をする時期ほど、ペットホテルの予約は増えます。
つまり、世の中が休むときほど、自分は休みにくくなります。
当店がペットホテルをやっていない一番の理由が、これです。
年末年始や長期休暇のコントロールがしにくくなる点を、どうしても許容できませんでした。
逆に言えば、ここを許容できる方にとっては、ペットホテルは強い収益源になります。
ただし、家族との時間、自分の休み、スタッフの働き方まで含めて考えないと、長く続けるのは難しいと思います。
近隣住民のクレームにつながるリスク
トリミングサロンは、住宅地の近くにあることも多いです。
その場合、宿泊中の犬の夜鳴きが近隣への迷惑になる可能性があります。
昼間のトリミング中の鳴き声であれば許容されても、夜間の鳴き声は問題になりやすいです。
一度クレームになると、ホテル事業の継続が難しくなることもあります。
防音対策をすれば大丈夫と考えたくなりますが、防音にも限度があります。
特に、マンションの1階、住宅密集地、隣家との距離が近い物件では、音の問題を甘く見ない方がいいです。
ペットホテルを始める前には、立地、建物の構造、近隣との距離、夜間の管理方法を慎重に確認する必要があります。
命を預かる事故のリスク
ペットホテルは、人のホテルとは違います。
犬にとって、慣れない場所で過ごすことは大きなストレスになります。
普段は元気な子でも、環境が変わることで食欲が落ちたり、下痢をしたり、体調を崩すことがあります。
シニア犬や持病のある子であれば、より慎重な判断が必要です。
最悪の場合、預かっている間に突然体調が悪化したり、亡くなってしまうリスクもゼロではありません。
たとえお店側に明らかな非がなかったとしても、預かっている間に何かが起きてしまえば、その事実は変えられません。
ペットホテルは、売上を増やせるサービスである一方で、命を預かるサービスです。
この覚悟は、収益の話とは切り離して持っておく必要があります。
スタッフへの負担が増える
ペットホテルを始めると、スタッフの負担も増えます。
トリミングだけであれば、営業時間内の仕事が中心です。
しかし、ペットホテルは朝晩のお世話、食事、排泄、散歩、清掃、体調確認、夜間の見守りなどが発生します。
トリミングの合間にホテルの子を見ることもできますが、頭数が増えると簡単ではありません。
特に小規模サロンの場合、オーナー自身がすべてを抱え込む形になりやすいです。
売上は増えても、休めない、気が抜けない、常に責任があるという状態が続くと、精神的な負担も大きくなります。
ペットホテルを導入するなら、誰が、いつ、どこまで対応するのかを事前に決めておく必要があります。
ペットホテルを始める前に必要な登録確認
ペットホテルを始める場合は、収益や集客だけでなく、法的な登録も確認しなければいけません。
ここを曖昧にしたまま始めるのは危険です。
第一種動物取扱業「保管」の登録が必要
ペットホテルを有料で行う場合は、第一種動物取扱業の「保管」に該当します。
すでにトリミングサロンを開業している場合は補完の資格を取得していますが、自治体への登録内容や施設基準を確認する必要があります。
環境省では、第一種動物取扱業を営む場合、事業所・業種ごとに登録を受ける必要があるとされています。
また、自治体の案内でも「保管」は、顧客の動物を預かる業として、ペットホテル業者や美容業者などが例示されています。
つまり、トリミングサロンだから何でも自由に預かれるというわけではありません。
ペットホテルを始める前に、必ず管轄の自治体に確認しましょう。
施設基準や管理方法も確認する
ペットホテルは、登録だけすれば終わりではありません。
預かる犬の安全を守るために、施設環境や管理方法も整える必要があります。
たとえば、次のような点です。
- 犬同士が接触しすぎない環境
- 清掃しやすい床や設備
- 脱走防止対策
- 夜間の見守り方法
- 食事や投薬の管理方法
- 緊急時の動物病院との連携
- シニア犬や持病のある犬の受け入れ基準
- 飼い主さんへの事前説明と同意
特に、事故が起きたときに「聞いていなかった」「説明されていなかった」となると、トラブルが大きくなります。
利用規約、同意書、緊急連絡先、受け入れ条件は、必ず事前に整えておきたい部分です。
長期預かりで気をつけたい登録と義務の違い
開業前に整理しておきたいのが、「どんな預かり方をするか」で必要な手続きが変わる点です。意外に思われるかもしれませんが、分かれ目は預かる日数の長さそのものではありません。
海外出張などで1ヶ月、長いと半年ほど預かるケースもあります。実際にそうした長期の犬を受け入れているサロンもあります。ただ、こうしたケースでも飼い主さんが所有者のままで「いずれ返す」前提であれば、期間がどれだけ長くても第一種動物取扱業の「保管」の範囲でカバーできます。トリミングサロンを開業する際に取る登録の延長で対応できるイメージです。
登録区分が変わるのは、日数ではなく「引き取るかどうか」です。老犬の終身預かりのように、飼い主さんが所有権を手放し、施設側が飼養費用を負担して飼い続ける形態は「保管」ではなく「譲受飼養」という別区分に該当し、別途の登録が必要になります。譲受飼養業では、預かった動物について個体ごとの帳簿を備えて保存し、毎年の所有状況を行政へ報告する義務も加わります。
もう一つ、日数で発生する義務もあります。同じ犬を1年以上にわたって預かる場合は、年1回以上の健康診断を受けさせ、その診断書を5年間保存することが求められます。これは「保管」のままでも対象になる規定です。
整理すると、こうなります。
- 数日〜半年程度の預かり(飼い主が所有者のまま):「保管」でOK。サロン開業時の登録の範囲。
- 同じ犬を1年以上預かる:「保管」のまま。ただし年1回の健康診断+診断書5年保存の義務が追加。
- 引き取って飼い続ける(老犬ホーム型):「譲受飼養」という別登録。帳簿保存・所有状況報告の義務も。
プレミアム型で長期滞在プランを設計するなら、自分のサービスがどこに当たるのかを、開業前に管轄の動物愛護センターへ確認しておくと安心です。
ペットホテルを導入するならホームページで伝えるべきこと
ペットホテルを始める場合、ただ「ペットホテルやっています」と書くだけでは不十分です。
飼い主さんは、大切な愛犬を預ける場所を慎重に選びます。
料金だけでなく、どんな環境で、誰が見てくれて、どこまで対応してくれるのかを知りたいからです。
ホームページには、最低限次の内容を載せておくと安心です。
- ペットホテルの料金
- 預かり時間
- チェックイン・チェックアウトの時間
- 1日の預かり頭数
- 宿泊環境の写真
- ケージ管理か個室管理か
- 夜間の見守り体制
- 散歩やフリータイムの有無
- 食事の持ち込みルール
- ワクチン証明の必要性
- シニア犬や持病のある子の受け入れ可否
- 予約方法
- キャンセル規定
- 緊急時の対応
ペットホテルは、飼い主さんの不安を減らせるほど予約につながりやすくなります。
特に個人サロンの場合、大手施設と同じように頭数や設備で勝負する必要はありません。
むしろ、「少数限定で丁寧に見る」「いつものトリマーが見てくれる」「トリミング利用者限定で安心」といった、個人サロンならではの安心感を伝える方が向いています。
よくある質問
- トリミングサロンのペットホテル経営は儲かりますか?
-
最近はペットホテルの単価が上昇傾向にあり、収益性は高まっています。都内にはトリミングとは別に、ペットホテルだけで月商80万円を作っているサロンもあります。トリミングと違い複数頭を並行して預かれるため、人件費に対する売上効率が高いのが特徴です。
- 個人サロンがペットホテルで利益を出すコツはありますか?
-
ケージをたくさん並べて頭数で稼ぐより、少数の頭数を丁寧に預かるプレミアム型がおすすめです。完全個室・カメラでの様子共有・1日数頭限定などの付加価値で単価を引き上げる方向のほうが、個人規模では利益を残しやすく、事故のリスクも抑えられます。
- ペットホテルの最大のデメリットは何ですか?
-
休みのコントロールが難しくなることです。ペットホテルの利用が増えるのは連休や年末年始など世の中が休む時期なので、繁忙期ほど自分が休めなくなります。当店がペットホテルをやっていないのも、この点を許容できなかったためです。
- ペットホテルを始めると近隣トラブルになりますか?
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宿泊中の犬の夜鳴きが近隣への迷惑になり、クレームにつながる恐れがあります。トリミングサロンは住宅地の近くにあることも多いため、開業前に立地と防音を慎重に確認してください。防音対策にも限度があるので、音の問題は楽観視しないほうが賢明です。
- 1ヶ月や半年などの長期預かりは別の登録が必要ですか?
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登録区分が変わるのは預かる日数の長さではなく「引き取るかどうか」です。海外出張などで1ヶ月〜半年預かる場合でも、飼い主さんが所有者のままで返す前提なら、期間がどれだけ長くても「保管」でカバーできます。一方、老犬の終身預かりのように引き取って飼い続ける形態は「譲受飼養」という別登録が必要です。なお同じ犬を1年以上預かる場合は、保管のままでも年1回の健康診断と診断書の5年間保存が義務になります。
- トリミングサロンにペットホテルは向いていますか?
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単価が上昇している今、相性は非常に良くなっています。トリミングのお客様がそのまま宿泊の見込み客になり、預かったついでのトリミング受注も期待できます。ただし繁忙期に休めないデメリットがあるため、その点を許容できる方には強い収益源になります。
まとめ:休めないデメリットを許容できるなら強い収益源になる
トリミングサロンとペットホテルは、相性のいい組み合わせです。
トリミングのお客様がそのまま宿泊の見込み客になり、預かったついでにトリミングを受注できることもあります。
さらに、ペットホテル検索から新規顧客を獲得できる可能性もあります。
実際に、ホテルだけで月商80万円ほどを作っているサロンもあり、設計次第では十分に収益の柱になります。
ただし、メリットだけを見て始めるのはおすすめできません。
ペットホテルには、繁忙期ほど休めない、近隣クレームにつながる、命を預かるリスクがある、スタッフやオーナーの負担が増えるといったデメリットがあります。
当店がペットホテルをやっていないのも、休みのコントロールを優先した判断です。
裏を返せば、繁忙期に休めない点を許容できる方にとっては、ペットホテルは非常に強い収益源になります。
導入するかどうかは、売上だけで判断するのではなく、自分の生活スタイル、店舗の立地、スタッフ体制、事故リスク、近隣環境まで含めて考えるべきです。
そして、ペットホテルを始めるなら、それを探している飼い主さんに見つけてもらう導線も必要です。
どんなコンセプトで、どんなお客様に、いくらで届けるのか。
その設計と、それをホームページで正しく伝えることが、ペットホテル兼業を成功させる鍵になります。
開業前から準備しておきたい項目の全体像は、トリミングサロン開業完全ガイドでまとめています。







