「トリマーを辞めたい」
こう思ったことがあるトリマーさんは、決して少なくないと思います。
給料が安い、休みが少ない、労働時間が長い、体力的にキツい。 こういった理由でトリマーという職業に将来性を感じられなくなる方はとても多いです。
ただ、辞める前に知っておいてほしいことがあります。 それは「トリマーという職業がダメなのか」と「今のサロンの環境がダメなのか」は、まったく別の問題だということです。
私自身、和歌山県と東京世田谷区のDOG SALON FREESIAで2店舗のトリミングサロンを経営してきました。 採用面接もしてきましたし、これまでに1,000件以上のトリマーさんからの独立開業相談を受けてきました。 その中には「辞めたい」という気持ちからスタートして、最終的に独立開業で自分の理想のサロンを作った方も少なくありません。
経営の傍ら、Instagramではトリマーさん向けに独立開業や経営のリアルを発信していて、現在5,500人以上のトリマーさんにフォローしていただいています。
この記事では、トリマーの離職率が高い本当の理由と、辞めたいと思ったときに取れる3つの選択肢を、経営者の本音でお伝えします。
トリマーの離職率は高いのか?
「トリマーは離職率が高い」とよく言われますが、実はトリマーに限定した公的な離職率の統計データは公表されていません。
ただ、給料が低い、労働時間が長い、体力的にキツいという条件が揃っている職種なので、離職率が高いと言われるのは肌感覚としても納得できます。 実際に私のところに相談に来る方の中にも、「辞めたいけど、辞めた後どうすればいいか分からない」という方がとても多いです。
公的な数字は出しにくいですが、「離職率が高い業界」であることは現場にいれば実感する事実です。 この記事では、なぜ辞めたくなるのか、そして辞める以外にどんな選択肢があるのかを整理していきます。
トリマーの離職率が高い3つの理由
トリマーは離職率が高い業界です。 結婚や出産をきっかけに離職する方もいますが、本質的な理由はもっとシンプルです。
1. 給料が低い
雇われトリマーの平均年収は約396万円(厚生労働省 job tag)で、ハローワーク求人統計の求人賃金は月額約20.9万円とされています。 ただし、実際にはもっと低いケースが多いです。 個人経営のサロンだと月給16万〜20万円くらいのところも珍しくありません。
ボーナスなし、昇給なし、というサロンも少なくないです。
数年間トリマーとして技術を磨いても、給料がほとんど変わらない。 これが「頑張っているのに報われない」という気持ちに繋がって、離職の大きな原因になっています。
2. 休みが少ない・労働時間が長い
週休1日、朝8時から夜7時まで勤務、繁忙期は休日返上。 こういう働き方をしているトリマーさんは今でもいます。
トリミングの仕事は1頭1頭に時間がかかるので、予約を詰め込みすぎると労働時間がどんどん延びます。 さらに、営業時間外にカルテの整理や掃除、予約対応などの事務作業がある場合、実質的な拘束時間はさらに長くなります。
3. 体力的にキツい
トリマーは立ち仕事です。 1日中立ちっぱなしで、大型犬のシャンプーやブローは全身を使う重労働です。
手首や腰を痛めるトリマーも多く、長年続けていると体への負担が蓄積していきます。 「好きな仕事だけど、体がついていかない」という理由で辞めるトリマーさんもいます。
でも、それは「トリマー」の問題ではなく「今のサロン」の問題かもしれない
ここが大事なポイントです。
給料が安い、休みが少ない、労働時間が長い。 これらは「トリマーという職業の限界」ではなく、「そのサロンの経営の問題」であることが多いです。
給料が低いのは、サロンの稼ぐ力が弱いから
トリマーの給料が低い根本的な理由は、サロン全体の売上から十分な利益が出ていないからです。
トリミングサロンは原価率が低く、利益率が高い業種です。 ちゃんと経営すれば、スタッフに十分な給料を払いながら利益を残すことは可能です。
それができていないサロンは、経営の効率化ができていないケースがほとんどです。
→ トリミングサロンの利益率と原価率|地方と都心で手元に残るお金はどう違う?
効率化できていないサロンの特徴
1,000件以上の相談やホームページ作成を通じて多くのサロンを見てきましたが、経営がうまくいっていないサロンには共通する特徴があります。
トリミングカルテが紙のままで、毎日15分くらいカルテの出し入れに時間がかかっている。 予約は電話だけで受けていて、電話対応のたびにトリミングの手が止まる。 予約時間をお客様の希望に合わせてしまい、1日にできる頭数が最大化されていない。 SNSやホームページでの集客をしておらず、新規客が来ない。
こういった非効率の積み重ねが、売上を圧迫して、スタッフの給料を上げられない原因になっています。
逆に言うと、効率化を進めれば月に数万円の売上アップはそれほど難しくないですし、営業時間後の締め作業を1日10分短縮するだけで、1ヶ月で300分=5時間の時間が浮きます。
条件のいいサロンは確実に増えている
「トリマーは給料が安くてキツい」というイメージが強いですが、最近では条件のいいトリミングサロンは確実に増えています。
効率よく稼げるサロンは、その利益をスタッフの給料アップや休日の確保に回すことができます。 条件のいいサロンでは優秀なトリマーの採用に力を入れているので、待遇面でも差が出やすくなっています。
一方で条件が悪いサロンは、離職率が高く、スタッフが安定しないから接客や技術の質も安定せず、顧客満足度が下がり、さらに稼げなくなるという悪循環に陥っています。
つまり、条件のいいサロンと条件の悪いサロンの待遇の二極化が進んでいるということです。 「トリマーは全体的に条件が悪い」のではなく、「条件が悪いサロンに留まっているから苦しい」というケースがかなり多いのが実情です。
もし今、条件の悪いサロンで働いている方は、他のサロンの求人情報を一度チェックしてみることを強くおすすめします。 同じトリマーの仕事でも、サロンが変わるだけで待遇が大きく変わることは珍しくありません。
辞めたいと思ったときの3つの選択肢
「辞めたい」と思ったとき、取れる選択肢は大きく3つあります。
選択肢1:条件のいいトリミングサロンに転職する
一番手っ取り早い方法が、条件のいいサロンへの転職です。
先ほど書いた通り、効率よく経営できているサロンは、給料も休日も今のサロンより良い可能性が高いです。
転職先を探すときのポイントとしては、
求人に書かれている給料・休日・労働時間を確認する そのサロンのホームページやInstagramを見て、お店の雰囲気や仕上がりの質を確認する できれば見学に行って、実際の働き方を自分の目で見る
転職のメリットは、トリマーとしてのキャリアを途切れさせずに、環境だけ変えられることです。
複数のサロンで働く経験は、技術の幅も広がりますし、将来独立するときの引き出しにもなります。 「1つのサロンしか知らない」状態よりも、「いろいろなサロンの良いところを知っている」方が、独立後の経営判断に確実に活きます。
選択肢2:今のサロンに効率化を提案してみる
今のサロンの人間関係や立地が気に入っている場合は、辞めずに環境を変えるという方法もあります。
具体的には、先ほど挙げた効率化のポイントをオーナーに提案してみることです。
カルテの電子化、LINE予約の導入、予約時間のコントロールなど、オーナーにとってもメリットがある提案であれば、聞いてくれる可能性はあります。
ただし、効率化に積極的ではないオーナーもいます。 提案しても「今のやり方で問題ない」と言われてしまった場合、そのサロンで労働環境が改善される見込みは低いです。 その場合は、転職か独立を検討する方が現実的です。
選択肢3:独立開業で自分の理想のサロンを作る
この記事を読んでいる方は、トリマーとして数年以上の経験がある方が多いと思います。 これまで一生懸命勉強してきて、技術を磨いてきたのに、「辞めたい」と思うのはもったいないことです。
だからこそ、「辞める」のではなく「自分の理想のサロンを作る」という選択肢を、一つ持っておいてほしいです。
自分がオーナーになれば、給料も休日も労働時間も、全部自分でコントロールできます。 単価設定、働き方、お店のコンセプト、全てを自分で決められます。
もちろんリスクはありますが、トリミングサロンは他の業種に比べて原価率が低く、利益率が高い構造を持っています。 立地とコンセプトを間違えなければ、軌道に乗せることは決して不可能ではないです。
「いつか独立したい」と思っている方は、辞めたいと思った今が動き出すタイミングかもしれません。
→ トリマーが独立するには?決意してから開業までにやることすべて
→ 【トリミングサロン経営者が解説】独立開業平均資金は300〜800万円
独立開業したら収入は増えるのか
「独立したら今より収入は増えますか?」 これはLINEの無料相談でも非常に多い質問です。
正直に言うと、「本人の頑張り次第」としか答えられない部分ではあります。 ただ、トリミングサロンは業種としてかなり利益を残しやすい構造なので、経営をしっかりやれば雇われ時代よりも収入が増える可能性は十分にあります。
独立トリマーの年収シミュレーションについては、以下の記事で実体験をもとに詳しく解説しています。
→ トリマーの年収はいくら?雇われと独立開業の収入を経営者が解説
大事なのは、ただ独立すれば稼げるわけではなく、集客の仕組みや単価設定をしっかり設計することです。 逆にそこを間違えると、雇われ時代より収入が下がるケースもあります。
男性トリマーは家族を養えるか
トリマー向けのLINE無料相談で、男性トリマーの方から「家族を養うことはできますか?」という質問もよくいただきます。
正直なところ、雇われトリマーとして奥様が専業主婦になる場合は、ハードルが高いです。 月給20万円前後だと、家族を養いながら将来の貯蓄もしていくのは厳しい数字です。
ただし、共働きであれば家族を養うことは十分に可能です。 さらに、独立開業すれば収入は自分の努力次第で大きく変わります。
実際、男性トリマーの方から相談を受ける場合、独立開業を前提で話をされる方がとても多いです。 「リスクを取ってでも、しっかり稼げるようになりたい」という方には、独立開業は現実的な選択肢になります。
トリマーを辞める前に、これだけはやってほしい
最後に、今「辞めたい」と思っている方にお願いしたいことが3つあります。
1. 他のサロンの求人情報をチェックしてみる
同じトリマーの仕事でも、サロンによって条件は全然違います。 今のサロンが全てだと思わずに、他のサロンのホームページやSNSを見て、トリマー募集の条件を比較してみてください。 「こんなに条件がいいサロンがあるのか」と驚くかもしれません。
2. 自分の理想のサロンを妄想してみる
「もし自分がオーナーだったら、どんなサロンを作るだろう?」 この妄想をしてみるだけでも、気持ちが少し軽くなります。
トリマーとして数年間働いてきたのであれば、自分なりの理想のサロン像は必ずあるはずです。 それを紙に書き出してみるだけでも、「辞めたい」から「変えたい」に気持ちが変わることがあります。
3. 誰かに相談してみる
辞めたい気持ちを1人で抱え込んでいると、どんどん視野が狭くなります。 身近に相談できるトリマーさんがいなければ、私のLINE相談でも構いません。
「辞めたい」から始まって、話しているうちに「独立開業を目指してみようかな」に変わった方はたくさんいます。 転職か、独立か、現状維持か。どれが一番現実的な選択肢なのかを一緒に整理できます。
まとめ|辞めたい理由は「トリマー」ではなく「環境」かもしれない
トリマーの離職率が高いのは事実です。 給料が低い、休みが少ない、体力的にキツい。これらは否定しません。
ただ、それは「トリマーという職業の限界」ではなく、「今のサロンの環境の問題」であることが多いです。
条件のいいサロンへの転職、今のサロンへの効率化提案、独立開業。 この3つの選択肢を知っているだけで、「辞める」以外の道が見えてきます。
これまで何年もかけて磨いてきたトリマーとしての技術と経験は、絶対に無駄になりません。 どうか辞める前に、一度立ち止まって考えてみてください。








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