トリミングサロン開業に必要な資格は?動物取扱責任者と第一種動物取扱業を解説

トリミングサロンやペットサロンの独立開業に必要な資格「動物取扱責任者」について

トリミングサロンを開業するには、「動物取扱責任者の要件を満たすこと」と「第一種動物取扱業(保管)の登録を受けること」の2つが必要です。

トリマー自体は国家資格ではないので、トリマーとして働くだけなら資格はいりません。ただし、自分のお店を開くとなると話は別で、この2つが揃わないと開業できません。

私自身は和歌山で1店舗目、東京世田谷区で2店舗目のトリミングサロン「DOG SALON FREESIA」を経営していて、実際に動物取扱責任者の取得と第一種動物取扱業の登録を両方の自治体で経験してきました。

さらにこれまで100名以上のトリマーさんの独立開業をサポートしてきた中で、「資格取得でつまずくパターン」もいくつも見てきました。

この記事では、制度の説明だけでなく、和歌山と東京で実際に登録した経験や、つまずきやすい落とし穴まで、実体験ベースで解説していきます。

トリミングサロン開業に必要な資格の早見表

項目必要・不要
トリマー資格(JKC、AAV等の民間資格)不要
国家資格そもそも存在しない
動物取扱責任者必要
第一種動物取扱業(保管)の登録必要

トリマーとして働くだけなら民間資格も含めて不要ですが、自分のお店を開くなら「動物取扱責任者の要件を満たすこと」と「第一種動物取扱業(保管)の登録を受けること」の2つが法律で義務付けられています。

それぞれの詳細を以下で解説していきますね。

目次

トリマーは国家資格ではない

「トリマー」という職業に、国家資格は存在しません。

トリマーになるための資格として有名なJKC(ジャパンケネルクラブ)のトリマー資格や、AAV、愛玩動物飼養管理士などはすべて民間資格です。極端に言えば、資格ゼロでもトリマーとして働くことはできます。

ただし、トリマーとして「働く」のと「独立開業する」のは別の話です。自分のお店を開くなら、以下の2つが法律で義務付けられています。

  • 動物取扱責任者の要件を満たす(自分自身または雇用者の誰かが)
  • 第一種動物取扱業(保管)の登録を受ける(お店ごとに必要)

この2つを揃えないと、法的にトリミングサロンを営業することはできません。

環境省の公式ページでも、「第一種動物取扱業を営む者は、事業所・業種ごとに都道府県知事または政令指定都市の長の登録を受けなければなりません」と明記されています。

動物取扱責任者になる6つの要件

動物取扱責任者になるには、以下の6つのいずれかを満たす必要があります。

  1. 獣医師
  2. 愛玩動物看護師
  3. 常勤職員として半年以上の実務経験 + 所定の学校を卒業
  4. 常勤職員として半年以上の実務経験 + 所定の資格を取得
  5. 1年以上の飼養経験 + 所定の学校を卒業
  6. 1年以上の飼養経験 + 所定の資格を取得

多くのトリマーさんが目指すのは3または4のルートです。獣医師や愛玩動物看護師のルートはハードルが高く、飼養経験のルートは解釈が曖昧で安定しません。トリマー専門学校を卒業して半年以上実務経験を積むか、トリマー塾出身なら実務経験+民間資格を取得する、というのが現実的なコースです。

【実体験】和歌山と東京で妻が取得したときのリアル

ここからは、私の妻が実際に動物取扱責任者を取得したときの話をします。同じ日本国内でも、自治体と時期によって運用が変わるので、体験談として参考になるはずです。

和歌山(1店舗目):実務経験だけでOKだった

和歌山で1店舗目を開業したときは、妻の実務経験だけで要件を満たすことができました。当時の担当者の判断で、専門学校の卒業証明などの追加提出は求められませんでした。

東京(2店舗目):専門学校卒業の資格で申請

東京で2店舗目のDOG SALON FREESIAを開業するときは、専門学校卒業の要件で申請しました。東京都動物愛護相談センターに以下を提出しています。

  • 卒業証明書
  • 在学時にどんな内容を学んだかの資料(カリキュラムや履修内容が分かるもの)

法改正もあり和歌山と東京で運用が違いました。ここが重要なポイントで、自治体によって求められる書類や解釈が変わるので、管轄の動物愛護センターや保健所に事前に確認するのが一番確実です。

100名以上サポートして見えた「資格取得でつまずくパターン」3つ

これまで100名以上のトリマーさんの独立開業をサポートしてきて、資格取得でつまずくパターンは大きく3つに分かれます。

パターン1:卒業した専門学校が要件の対象外だった

「所定の学校」というのは、公立か学校法人の大学・専門学校が対象です。トリマー塾やスクール形式の教室は、法人格の関係で対象外になることが多いです。

本人は「専門学校を卒業した」と思っていても、法的な位置づけが違って要件を満たさないケースが意外と多くあります。

パターン2:慌てて別資格を探したら試験日が遠くて開業延期

パターン1に気づいたあと、慌てて「所定の資格」(愛玩動物飼養管理士など)を取ろうとしても、試験日が年に数回しかないものが多く、受験日まで半年待ちになって開業を延期したというケースが複数ありました。

パターン3:動物取扱責任者研修の日程や自治体運用で開業延期

動物取扱責任者の研修について、自治体によっては登録申請の前に受けるように求められるケースもあります。この点を見落として、開業直前に慌てる方は少なくありません。

研修は月1回程度しか開催されない自治体もあるので、「次の研修まで1ヶ月以上待たされる」ことになると、開業がずれ込む原因になってしまいます。

これらの失敗を防ぐには、資格関連の準備は開業の半年前から動き始めるのが鉄則です。

所定の学校・所定の資格の確認方法

所定の学校とは

  • 公立または学校法人の大学・専門学校
  • トリマー塾、民間スクールは基本的に対象外
  • 同じ「専門学校」でも法人格がないと認められないケースあり

所定の資格の代表例

  • 愛玩動物飼養管理士(1級・2級)
  • 愛犬飼育管理士
  • 愛護動物取扱管理士
  • 家庭犬訓練士
  • 家庭動物管理士
  • 動物介在福祉士
  • 動物看護師(民間資格の方)
  • ペットシッター士

これらはすべて民間の資格ですが、動物愛護管理法の枠組みで「公平性・専門性のある団体が行った試験による資格」として認められています。

ただし、最終判断は自治体ごとに行われるので、取得予定の資格がトリミングサロン開業の要件として認められるかは、事前に管轄の動物愛護センターや保健所に確認してください。

それぞれの資格の合格率については、以下の記事で詳しく解説しています。どの資格を取るか迷っている方は参考にしてみてください。

>>動物取扱責任者の各認定資格の合格率について

半年以上の実務経験について

実務経験の要件には、細かい条件があります。

基本ルール

  • 第一種動物取扱業者として登録を受けた事業者での勤務が必須
  • 勤務期間は6ヶ月以上、時間換算で概ね800時間以上
  • 正規雇用(常勤職員)としての勤務が原則

アルバイトは認められる?

基本的にはアルバイトは要件外ですが、自治体によっては「正社員と同等の勤務時間(週5日フルタイム)」なら認められるケースがあります。

私の知り合いにも、アルバイトで半年以上トリマーとして働き、動物取扱責任者を取得できた方がいました。運用は自治体によって変わるので、諦める前に管轄の保健所に問い合わせるのがおすすめです。

実務経験証明書が出ない場合

前職の事業者が実務経験証明書を発行してくれないケースも、実は少なくありません。この場合でも、以下のような代替資料で実務経験を証明できる可能性があります。

  • 給与明細(出勤時間や勤務日数が記載されているもの)
  • タイムカードのコピー
  • 雇用契約書+勤務実態を示す資料
  • 源泉徴収票

証明書が出ないから諦めるのではなく、まずは管轄の保健所に「こういう資料で代替できるか」を相談するのが正解です。

動物取扱責任者研修について

動物取扱責任者として選任されたあとは、自治体が実施する研修の受講義務があります。

注意しておきたいのは、この研修は「動物取扱責任者の資格を得るためのもの」ではないという点です。西宮市や横浜市などの自治体公式サイトでも、「本研修を受講することで、動物取扱責任者の資格が得られるわけではありません」と明記されています。

あくまで「選任されたあとの継続的な義務」としての研修なので、要件を満たしていれば、研修を受ける前の段階でも動物取扱責任者として登録申請できる自治体もあります。

研修を受けるタイミングは自治体によって変わる

ちょっとややこしいのが、研修を受けるタイミングが自治体によって変わるという点です。

自治体によっては、登録申請の前に「新規研修」を受けておくように求められるケースもあれば、登録後の次の研修で問題ないケースもあります。

私の場合、和歌山で開業したときと東京で開業したときでも運用が少し違いました。

研修の頻度も月1回程度のところが多いのですが、自治体によっては開催が少ないところもあるので、「先に受けておかないと登録できない」パターンに当たってしまうと、開業がずれ込む原因になってしまいます。

登録申請の前に、管轄の動物愛護センターや保健所に「研修はいつまでに受ける必要があるか」を事前確認しておくのが一番確実です。

研修の頻度・場所と申し込みのタイミング

研修は自治体によって会場・頻度が違います。

私が東京で申し込んだときは、開催頻度が少なくて府中まで行くことになりました。

現在は、登録後の年1回の研修についてはオンラインか会場かを選べる自治体も増えてきています。

申し込みのタイミングは、開業の3ヶ月前までには動き始めるのが理想です。開業直前に「登録前に研修が必要」と気づくと、次の研修まで1ヶ月以上待たされて、開業がずれ込むことがあります。

第一種動物取扱業(保管)の登録と施設要件

動物取扱責任者の要件が整ったら、次はお店そのものの登録です。トリミングサロンは「保管」の区分に該当します。

ちなみに、トリミングサロンと同じ「保管」区分にペットホテルも含まれるので、ペットホテルを併設する場合でも登録は「保管」1つでカバーできます。併設を考えている方はこの点も押さえておきましょう。

施設チェックの実際

お店の内装が完成したタイミングで、保健所の担当者が施設チェックに来ます。

  • 事前に日時を予約して実施
  • チェック自体は30分もかからないくらいで終わる
  • 要件を満たしていれば、その場でOKが出る

チェックされる主な項目

施設要件については環境省令で定められていて、動物の健康と安全、生活環境の保全を守るための基準が自治体ごとに細かく運用されています。横浜市をはじめとする各自治体の公式サイトでも、死体の一時保管場所や遮光設備など具体的な設備要件が明示されています。

チェックされる主な項目はこんな感じです。

  • ケージ(収容予定頭数分・転倒防止措置)
  • 照明設備
  • 給水設備
  • 排水設備
  • 洗浄設備
  • 消毒設備
  • 汚物・残さ等の廃棄物集積設備
  • 動物の死体保管所
  • 餌の保管場所
  • 清掃設備
  • 空調設備
  • 遮光または風雨を遮る設備

私の施設チェックで指摘された2つのポイント

実際に保健所の担当者から指摘された項目を共有します。

1つ目は遮光設備です。わんちゃんが常時いる場所に光が入る時間がある場合、カーテンやブラインドなどの遮光設備が必要だと言われました。直射日光が差し込む窓がある店舗は、特に注意が必要です。

2つ目は動物の死体保管所です。名称は仰々しいですが、「万が一のときに動物の亡骸を入れるケース」を用意しておくように言われました。担当者からは「普段はタオルや物を収納する衣装ケースで構わない」との説明でした。

この2つは見落とされがちなので、内装工事の段階で忘れずに準備してください。

登録手数料

  • トリミングサロン(保管のみ):15,000円
  • 生体販売もするなら「販売」も追加で必要

資格取得から開業までのステップ

つまずかないためには、以下の順序で進めるのが安全です。

  1. 動物取扱責任者の要件を満たすルートを決める(学校卒業?資格取得?実務経験?)
  2. 足りない要件があれば早めに動く(試験日・研修日を押さえる)
  3. 管轄の自治体に「研修は登録前後どちらで受けるか」を確認
  4. 動物取扱責任者研修の申し込み(開業3ヶ月前まで)
  5. 物件決定+施設要件を満たす内装工事
  6. 第一種動物取扱業の申請+施設チェック
  7. 登録完了後に開業

資格の準備は、開業スケジュール全体の中でも一番余裕を持って動くべき部分です。ここでつまずくと、物件を契約しているのに開業できず、家賃だけが出ていく最悪の事態になります。

よくある質問(FAQ)

トリマーは国家資格ですか?

いいえ、トリマーは国家資格ではありません。民間資格はいくつかありますが、トリマーとして働くだけなら資格は必須ではありません。ただし、独立開業するなら動物取扱責任者と第一種動物取扱業の登録が必要です。

資格なしでトリミングサロンを開業できますか?

できません。トリマーとしての民間資格は不要ですが、「動物取扱責任者の要件を満たすこと」と「第一種動物取扱業の登録を受けること」は法律で義務付けられています。

独学でも動物取扱責任者になれますか?

独学そのものは要件に関係ありません。重要なのは「所定の学校卒業」「所定の資格取得」「実務経験」のいずれかを満たすことです。独学でトリマーになった方でも、所定の資格を取得して半年以上の実務経験を積めば、動物取扱責任者になれます。

トリマー塾の卒業は「所定の学校」に含まれますか?

多くの場合は含まれません。「所定の学校」は公立または学校法人の大学・専門学校が対象です。トリマー塾出身の方は、別途「所定の資格」を取得するルートを選ぶのが一般的です。

実務経験はアルバイトでも認められますか?

原則は常勤職員(正社員)ですが、自治体によっては週5日のフルタイム勤務など「正社員と同等」と判断されるケースで認められることがあります。管轄の保健所に事前確認してください。

動物病院でのトリマー経験は実務経験になりますか?

認められる可能性が高いですが、自治体によって解釈が異なります。必ず管轄の保健所に確認してください。

自宅開業でも第一種動物取扱業の登録は必要ですか?

はい、必要です。自宅であっても、お客様のわんちゃんを預かってトリミングする以上、「保管」の区分で登録が必要です。

出張トリミングでも資格は必要ですか?

出張トリミングで「お預かりしない」場合は、判断が難しいグレーゾーンです。自治体によっては不要とされるケースもありますが、お預かりする場合は保管の登録が必要になります。必ず事前確認してください。

研修を受ければ動物取扱責任者の資格が得られますか?

いいえ、研修を受けること自体では資格は得られません。西宮市や横浜市などの自治体公式サイトでも明記されている通り、研修は「動物取扱責任者として選任されたあとの継続的な義務」です。資格を得るには、6つの要件のいずれかを満たす必要があります。

ペットホテルも同じ登録でOKですか?

トリミングサロンもペットホテルも第一種動物取扱業の「保管」区分に該当するので、同じ事業所で両方を営む場合、「保管」の登録1つでカバーできます。追加の登録費用はかかりません。

ただし、ペットショップのような生体販売を追加する場合は、別途「販売」の登録が必要になり、追加で15,000円の手数料がかかります。施設要件もペットホテル用の宿泊ケージなどが加わるので、内装工事前に管轄の保健所に確認しておくのがおすすめです。

資格を取得したら次に準備すること

資格の準備が見えてきたら、開業に向けて次のステップに進みましょう。

まとめ

トリミングサロン開業に必要な資格は、「動物取扱責任者の要件を満たすこと」と「第一種動物取扱業の登録を受けること」の2つです。トリマー自体は国家資格ではないので、トリマーとしての資格は必須ではありません。

資格取得でつまずかないためには、開業の半年前から動き始めること、そして管轄の動物愛護センターや保健所に事前確認することが何よりも大事です。

自治体によって運用が違うので、他人の体験談や古い情報を鵜呑みにせず、必ず自分の地域の担当部署に確認してください。私自身も和歌山と東京で運用が違うことを実体験しています。

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